平成26年度 博学連携推進モデル事業

高校生が調べる鳥居龍藏 ―鳥居龍蔵とアイヌについて―

 鳥居龍蔵記念博物館における博学連携のあり方を探るため、特定の学校とタイアップして行う事業です。

○実施期間 2014年5月~2015年2月
○対象校・学年等 徳島市立高等学校1・2年生(歴史研究部員)
○内容
 当該校では、全生徒が修学旅行で北海道へ行き、アイヌ民族の歴史・文化や現状について学ぶ機会をもっています。その事前・事後学習と連動し、とくに当該 校歴史研究部員に、鳥居龍蔵記念博物館と連携しつつ、徳島と北海道のつながり、鳥居龍蔵のアイヌ調査やアイヌ観などについて研究してもらい、成果発表の機会をもちます。
 鳥居龍蔵記念博物館を含む文化の森はもちろん、大学や県外の博物館で学ぶ機会をもつようにして生徒の知識・経験の幅を広げるとともに、アイヌ民族について学ぶことによる人権教育としての効果も期待できます。
 
■5月30日(金)
 事業のスタートにあたり、まずは高校生たちに来館してもらいました。歴史研究部員10人のほか、引率の先生、教育実習生あわせて16人でした。
 館長からの歓迎のあいさつに続き、スタッフの自己紹介、事業の趣旨やスケジュールの説明があり、その後、展示室で鳥居龍蔵の研究活動や生涯のアウトラインを学びました。展示室にある体験キットもしっかり楽しんだ後、歴史全般についても知っておこうということで、県立博物館常設展示室、さらには企画展「いただきま~す」をざっと見学しました。
 鳥居龍蔵の名前は知っているものの、具体的なイメージのない生徒が多い中、ひとまず、どんなことをした人物なのかということは認識してもらえたかと思います。どういうところに関心を向けてもらえるか、今後、担当の先生と相談しながら進めていくことになります。

   
 館長のあいさつを聞いている様子  ちょっと緊張気味の高校生たち
   
   
 展示室1で説明を聞いている様子   展示室2で説明を聞いている様子
   
   
  展示室3で民族衣装を試着  展示室3にある南米の土器のパズルに挑戦中
   
   
 ついでに… 県立博物館の展示で歴史の流れを学習中(徳島城の模型) ついでに… 県立博物館の展示で歴史の流れを学習中(阿波藍)
■6月15日(日)
 鳥居龍蔵の生涯と研究の意義などについて学んでもらうため、専門家の講義を聞きました。今回は、徳島県立文学書道館にて実施し、参加者は歴史研究部員7人と先生2人でした。
 講義をお引き受けいただいたのは、天羽利夫さん(鳥居龍蔵を語る会代表)、吉原秀喜さん(北海道平取町職員)で、鳥居龍蔵の魅力や彼の研究がどんな意義を持っていたかということを、分かりやすくお話しいただきました。
 一部の生徒は、午後、同じ場所で開催された「鳥居龍蔵を語る会」例会にも参加し、吉原さんによる「鳥居龍蔵のアイヌ民族・文化論」という講演を聞きました。

   
講義を聞いている様子 講師のおふたり
 ■7月13日(日)
 この事業について、徳島新聞2014年7月13日付け「ニチヤン」面に紹介記事が掲載されました。取材していただいた記者さんに感謝しています。徳島新聞社の許可を得て、記事を転載しました。ご覧ください。
 
 
(徳島新聞社提供、無断複製を禁ず)
 ■8月26日(火)
 夏休み中ですが、四国大学を訪問しました。鳥居龍蔵の学問(日本人論)について、人類学の性格など大局的なところから学んでおこうということで、専門家の講義をお願いしました。今回の参加者は、歴史研究部員8人、先生1人でした。
 四国大学経営情報館の1室を提供していただき、関口寛さん(四国大学経営情報学部准教授)からお話を聞きました。鳥居龍蔵の日本人論の学史的意義、ヨーロッパでの人類学の成立と進化論との関係、人類学における人種研究の「負」の側面とその反省からの現代人類学の指向性などを解説していただき、今までにない視点を与えていただきました。生徒たちにとっては刺激的な一時だったようです。

   
 講義を聞いている様子  講義をしている関口さん
 ■9月7日(日)
 「市高祭」(徳島市立高校の文化祭)で、歴史研究部員が鳥居龍蔵についての「中間報告」をポスター発表しました。鳥居への関心を深めつつある様子を頼もしく感じました。高校生たちの研究の進展を見守りたいものです。
 
 
 市之瀬さん、棚橋さん、矢代さんが作ったポスター
 ■12月21日(日)
 師走の1日、大阪へ行きました。目的は、国立民族学博物館を訪ね、専門家のお話をうかがうとともに、展示を通じて、アイヌ関係を中心とする諸民族の文化について学ぶことでした。参加者は歴史研究部員を中心とする生徒18人、生徒1人でした。
 2013年に開催した「鳥居龍蔵とアイヌ」展の監修いただいた齋藤玲子さん(国立民族学博物館民族文化研究部助教)による講義「アイヌ民族の歴史と文化」を聞いた後、常設展示室のアイヌ関係展示の説明を受けました。レストランでの昼食を楽しんだ後、さらに思い思いに展示を見学しました。「面白かった」という感想を話してくれた生徒がいましたが、刺激を受けた1日になったようです。
 なお、往路の車中では、これまでに調べてきたことを発表してくれた生徒がいました。ほかにも鳥居龍蔵や人類学、考古学などに関心を深めている生徒がいます。最終的には2月に取り組み内容をまとめて発表会を開催する予定です。

   
車中での発表の様子
   
   
齋藤さんによる講義 齋藤さんによる展示解説
   
民博の玄関前での記念写真。間に合わなかった生徒が若干いました (T_T)
 ■2月22日(日)
 前回の記録から間があきましたが、2月22日に発表会を開催することになったので、生徒たちはこの間、鳥居龍蔵の自叙伝『ある老学徒の手記』や各種の参考文献を読んだり、自分たちの学んだことを整理したりして、総まとめを進めていました。そして、最近2週間ほどは、発表会に向けて急ピッチで作業が行われ、パワーポイントでのスライド作成や発表の練習が進みました。
 そして、ついに発表会。「高校生が見た鳥居龍蔵」と題して、文化の森ミニシアターにて開催しました。高校生たちの話が聞きたいということで、わざわざおいでくださったお客様もいて、ありがたいことでした。
 限られた時間ではありましたが、歴史研究部員ら生徒8人が代わる代わる、堂々たる発表をしました。学んだことの紹介にとどまらず、自分たちの日常に引き付けての鳥居龍蔵とその研究の現代的意義の分析、博物館を活用した学習の有効性の提言など、興味深い内容でした。天羽利夫さん(鳥居龍蔵を語る会代表)からの講評をいただき、また、臨席いただいた佐野義行県教委教育長からもコメントをいただきました。
 発表会をもって、この事業はいったん幕を下ろします。後は、鳥居龍蔵記念博物館と徳島市立高校との間で、成果と課題を確認することで、今後の方向性を探ることになります。

  
準備中の様子(発表スライドから)
   
 発表前の自己紹介  発表中の様子
   
講評中の天羽さん  コメント中の佐野教育長
  ■3月1日(日)
 2月22日の発表会について、徳島新聞2015年3月1日付け「ニチヤン」面に紹介記事が掲載されました。前回(7月13日付け記事)に引き続き、取材していただいた記者さんにはお礼申し上げます。徳島新聞社の許可を得て、記事を転載しました。ご覧ください。

 
 (徳島新聞社提供、無断複製を禁ず)

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